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ゼロから始める水中写真~TG-6編
第2回:撮影機材を水没から守るグッズとメンテナンス
解説/水中写真家・清水 淳

第2回:撮影機材を水没から守るグッズとメンテナンス

水中写真を上手に撮らせてくれるコンパクトデジタルカメラとして超人気のカメラ「TG-6」。ビギナーのフォト派ダイバーに向けて、TGシリーズの開発にも着手してきた水中写真家・清水 淳先生より手取り足取りのアドバイスを聞く4回集中連載の第2回。カメラをハウジングに入れる時の注意点~撮影機材を水没から守るグッズとメンテナンスの方法についてお届けします。

写真・文/水中写真家 清水 淳

使用前にメンテナンスは必ず行なおう

水中撮影では「撮影機材を水没から守るテクニックの習得」は避けては通れない大切なテクニック。 カメラ自体が防水タイプのものもありますが、使用前には必ずメンテナンスを行ないます。そして使用後はできる限り早く真水で塩分を取り除きたいもの。真水の水槽があれば撮影機材を全て浸け置きすることをおすすめします。
今回は、大切な使用前の水中撮影機材のメンテナンスについて解説します。

カメラや防水ハウジングのメーカーによって、メンテナンスのやり方、 考え方が異なるので、実際のメンテナンスではご自身のカメラ&ハウジングの取り扱い説明書を確認してください。
今回は、OLYMPUS(OMシステムズ社)のTG-6&PT-059をモチーフに解説していきます。

メンテナンスに使うグッズ

まずは、メンテナンスに使うグッズを揃えましょう。
以下は、普段私が使っているメンテナンスグッズです。どこででも手に入るものから、ちょっと大きなカメラ専門店に行かないと置いてないものまで、いろいろありますが一つずつ紹介していきます。 

メンテナンスに使うグッズ

◆ハンドブロワー

ハンドブロワー

元々はレンズに付着している埃やゴミなどを吹き飛ばす道具なのですが、水中写真愛好家の間ではハウジングに付着している水分を吹き飛ばすのに用いています。
ハウジングのボタンホールやOリングの周り、バックル、レバーなどダイビング後真水の水槽で全てのボタンとレバー&ダイヤルを動かして、細かい部分に潜む塩分を除去します。
水槽から取り出してハウジングの蓋を開ける前に、ハウジングをタオルなどで水分を大まかに取り除きます。ハンドブロワーで細かく入り組んだ部分の水分を根気よく吹き飛ばして、吹き飛ばした水分はタオルやキムワイプなどでぬぐいながら行ないます。

◆キムワイプ

キムワイプ

拭き取るために作られた紙製品。
水に溶けないので濡れたハウジングの手入れやOリング自体のゴミを取り除く作業に必要なローリントペーパー。毛羽立ちや紙粉が少なく強度もあります。
なお、毛羽が立ち、濡れると溶けるティッシュペーパーは水中撮影機材のメンテナンスには使用しないこと。
キムワイプは水中撮影機材のメンテナンスに欠かせないグッズです。作業効率や使い勝手の良いポップアップタイプが使いやすいですよ。

◆Oリングリムーバー

Oリングリムーバー

ハウジングからOリングを取り出すときに使う道具。
Oリングを傷めないで外すことができます。前回ご紹介したようにTG-6の専用防水ハウジングPT-059に同梱されています。
Oリングを外す時は楊枝や画鋲、虫ピンなどは使用しないこと。

◆綿棒

綿棒

Oリング溝とOリングが当たる面の清掃や、レンズに小さいゴミが付いた場合にこの綿棒で清掃します。
比較的付着している砂が微量の時に清掃がしやすいです。安価な綿棒は水に濡れると綿球がほつれて溝に残りやすいので注意。

◆歯ブラシ(柔らかめ)

歯ブラシ(柔らかめ)

Oリング溝にひどく砂がついている場合には、綿棒での清掃より歯ブラシで掻きだすと良いです。
近くが見えない方には、便利な道具。確実に砂を掃除できます。ハウジングの入り組んだ細かい部分の掃除にも便利です。

◆Eリング爪楊枝

Eリング爪楊枝

ボタンシャフトにグリスを塗る場合に便利。
ボタンシャフトにはグリスアップを施します。長い間使っていくとボタンシャフトのOリングのグリス分が失われていき、動きが悪くなったり、ボタンが戻らなくなったりとトラブルが出てきます。そこで新品のうちから、ハウジングの内側からアクセスできるシャフトへは、シャフトについているEリングの内側にグリスを塗ります。
ボタンを押すとシャフトが動きEリングが見えます。その内側にグリスを少量塗りましょう。ハウジングの外側に塗ると砂がつき逆効果になりますのでご注意を。

◆クリーニング液

クリーニング液

レンズ面などにグリスなど酷い汚れが付き、レンズクリーニングペーパーだけでは、汚れが取れない場合にレンズクリーニング液を使います。
クリーニング液によっては、レンズのコート面を痛めることもあるので注意が必要。クリーニング液の注意事項をよく確認しましょう。
ハウジングの外側のレンズ面の汚れは、中性洗剤を薄めてクリーニング・ペーパーで拭き取ることで汚れが取れる場合も多いです。

◆シリコングリス

シリコングリス

純正のグリスを必ず使いましょう。
大量に塗る必要はありませんが、ハウジングの蓋を開けたらその度に必ずOリングの溝の掃除を行ない、Oリングが当たる面を清掃します。
清掃が終わったら、Oリングにグリスを塗布します。日本のお米2〜3粒程度。少ないのは×、多すぎても無駄。

要チェック!
グリスはメーカーによって成分も異なる!!

グリスはメーカーによって成分も異なる!!

Oリングに塗るグリスは、ハウジングを制作しているメーカーによってグリスの成分が異なります。 いろいろなメーカーのアクセサリーを使う方は注意が必要です。 OLYMPUSのハウジングにはOLYMPUSグリスを使用すること。 INONのフラッシュやSEA&SEAのフラッシュのグリスを混ぜて使ったりしないこと。

今回はメンテナンスの方法を紹介しましたが、正しくメンテナンスを行なえば撮影機材は長持ちします。
私の所属する水中写真教室ではTG-6&PT-059のレンタル機を10台所有していますが、毎日使って既に3年以上経ちますが、不調な機材は未だありません。
毎回、使用前使用後に正しくメンテナンスを行なうことをおすすめします!

水中写真家であり、水中撮影術のスーパー講師!
清水 淳先生プロフィール

清水 淳

写真家。しみずじゅん。1964年生まれ。水中写真や海辺の風景を撮り続けている。執筆や撮影、研究、テストを行いながら、沖縄・那覇にて水中写真教室《マリーンプロダクト》を主宰。
カメラ機材に精通し、機材の特性を生かす能力が評価され、水中撮影アクセサリーの開発アドバイザーやテスト撮影の要望、撮影に関する原稿執筆も多い。
マンツーマンで水中撮影を一緒に楽しむプライベートレッスンが好評でOM-1の使い方講習の要望が多い。
テクニカルダイビングを利用した新しい撮影ジャンルにも挑戦中。公益社団法人日本写真家協会会員

清水淳の公式ホームページ

清水淳のInstagram

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写真家/清水 淳プロデュース
1泊2日計8ダイブの渡名喜&慶良間フォトクルーズ

「感動の一瞬はこうして生まれた……水中写真家 作品探訪」連載
清水 淳さんインタビュー記事も併せてご覧ください。