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耳ぬき不良は治る!
第2回 耳ぬき不良の“都市伝説”(文・三保 仁)

耳ぬき不良は治る!

ダイバーや潜水医学を知らない耳鼻科医でさえも、耳ぬき不良の原因について、とんでもない勘違いをしているのをよく耳にします。私がよく耳にする「耳ぬき不良の都市伝説」をまとめました。 連載第2回では、これらについて何が伝説なのかを解説していきます。

※月刊『マリンダイビング』2016年12月号に掲載された記事です。

耳ぬき不良の“都市伝説”

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1. 生まれつき耳管の細い人が
耳ぬき不良を起こす。

インストラクターや一般の耳鼻科医でさえ、耳ぬき不良=耳管狭窄症と信じ込んでいて、耳ぬき不良の人は「耳管が細い」と思っているようです。しかし、耳ぬきの善し悪しは耳管機能によって異なるだけで、太さとは何の関連性もないのです。たとえ耳管が太い人でも、耳管開放症などの状態で耳管機能が悪い人は、耳ぬきも良くありません。例えば、滲出性中耳炎の子供たちも、近年は約60%が耳管開放症であることがわかり、耳管の太さに関係なく耳管機能が悪いことが原因なのです。
耳ぬきについても、まさしくこれと同じと言えます。
しかし、耳管機能が極端に悪い人たちは、大人になるまでの間に慢性中耳炎になってしまい、そもそも潜水適正が全くない病気になっているのです。
逆に言えば、現在鼓膜が完全に正常であれば、ダイビングで支障がない程度に耳ぬきができる最低限の耳管機能は持っているので、訓練や治療でほぼ100%治ります。ただし、今は治っていても、子どもの頃の「中耳炎の跡」が残っている人は潜ることはできません。これについては次回お話します。

2.耳鼻科へ「耳管通気治療」に
通えば、
耳ぬき不良は治る。

耳ぬき不良で一般の耳鼻科を受診すると、ほぼ100%この耳管通気治療を受けます。金属製の管を鼻から耳管に挿入し、耳管を通して中耳腔に空気を送り込む方法です。それで「通りが悪いから耳ぬきが悪い」などと指摘され、通院するように指示されます。そのように医師に言われてしまえば、きっとこの治療を受ければ耳ぬき不良は治ると思ってしまいますね。これこそ都市伝説そのものです。もちろん、潜水医学の知識がない医師もそれが正しい診断と治療だと信じているので、悪意を持ってだましているわけではありません。
例えば、耳管開放症が原因の耳ぬき不良の人は、この通気でとてもよく通ります。ですから、耳ぬきの善し悪しを評価できないというわけです。
これまでに、この治療に半年通ったが全く改善しなかったという方が何十人も受診されて、かわいそうでした。このカテーテル耳管通気法というものは、機械で耳へ空気を送り込む「受動的通気」であって、自分が行なう「能動的通気」の耳ぬきとの関連性は全くなく、ほとんどの人が技術的問題(やり方が下手)によって耳ぬき不良が起きているのですから、人にやってもらっても上手になるわけがありませんし、通気を水中でやってもらうこともできません。そして、通気治療に通っても耳管機能は良くなりません。
要するに、カテーテル耳管通気法は耳ぬきの状態を評価することもできず、耳ぬきを改善させる効果も全くなく、何の意味もないということなのです。中には、この治療を通院していたら耳ぬきが良くなったという人もいましたが、飲み薬やネブライザー(吸入)治療の効果が出たのを勘違いしているのです。

3.鼻アレルギーや蓄膿症
(副鼻腔炎)があると、
耳ぬき不良になる。

鼻アレルギーの日本人の有病率は今や52%といわれ、そのうちの約30%が慢性蓄膿症です。これらの鼻の病気があると、いつも鼻の粘膜が腫れて、いわゆる鼻づまり状態になってしまいます。一般の耳鼻科医は、それが原因で耳ぬき不良が起きると考えています。ですが、実はほとんどのケースではこれらの鼻の病気と耳ぬき不良が関連しない人たちばかりです。後の連載でお話ししますが、これら鼻の病気が原因でサイナススクイーズの原因になることはあるものの、耳ぬき不良の原因になる人は3%ちょっとしかいないのです。そして、その3%の人たちについて分析すると、鼻アレルギーの重症度と耳ぬき不良の程度について関連性がないことがわかっています。
耳ぬきの技術的問題がなくても耳ぬき不良を起こす人は、自覚症状がないほど軽い鼻アレルギーの人でも治療をして耳ぬきが良くなるケースもありますし、逆に最重症の鼻アレルギーや蓄膿症の人でも、耳ぬきに何ら支障がないダイバーもたくさんいます。
結論として、約97%の人たちには、鼻アレルギーや蓄膿症は耳ぬき不良と関係ないのです。

4.鼻の軟骨が曲がっていると
(鼻中隔湾曲症)、
耳ぬき不良の原因になる。

図1にあるように、耳管の出入り口である耳管開口部は、両方の鼻の穴の奥が1つの空間になった上咽頭と呼ばれる場所にあります。ですから、いくら鼻の軟骨が曲がっていても、その奥ですから何の影響もありません。完全に片鼻が塞がっている重症の鼻曲がりでも関係ないのです。鼻アレルギーや蓄膿の鼻炎でいくら鼻がつまっていても耳ぬきに影響しないのも、同じ理由なのです。そもそも、鼻をつまむ耳ぬき方法の人は、鼻をつまんで鼻の穴を塞いでいるのですから、どんなに鼻が塞がっていても関係ないわけです。
かつて、医師の勧めで鼻曲がりを治す手術を受けたけれど、全く耳ぬき不良が改善しなかったというダイバーが数人いました。鼻づまりを治すためであれば手術を受けた価値はありますが、耳ぬき不良を治すことを目的としたのであれば、本当にかわいそうな話です。

図1 中耳炎と難聴

5.フードをかぶると
耳ぬき不良を起こす。

耳の穴が塞がっていても、鼓膜によって耳の穴は仕切られているので、鼓膜の内側に耳管を通して空気を送る耳ぬきには何ら関連性はないのです。しかし、実際にフードをかぶっていて耳に圧迫感が起きたり痛くなったりすることがあるのですが、それはフードが耳の穴の入り口に密着してしまって耳栓をして潜っているのと同じ状態になるため、潜降中に外耳道の空気が水圧で収縮すると、鼓膜が外側に引っ張られるのが理由です。外耳道スクイーズは耳ぬき不良の耳の痛みと同じなので、勘違いをしている人が多いのです。そのようなときには、フードを引っ張って、耳の中に水が入るようにすると治ります。ダイビングでは耳栓をしてはいけないという理由は、外耳道スクイーズを起こして鼓膜に穴があいてしまうからなのです。

6.耳ぬき不良が起きたら、
水中でじっとして
楽になるのを待つ。

確かに、耳ぬき不良の状態を我慢して水中にとどまると、耳の痛みは和らいできます。ですが、これはとんでもないことをしているのです。鼓膜の内側の中耳腔に陰圧がかかったままになっていると、周囲の粘膜から組織液や血液がにじみ出して中耳腔にたまります。すると、陰圧が減少するので耳の痛みが和らぐのです。これを中耳気圧外傷と言います。こうなると、数日間から数週間ぐらい、耳の中に水が入ったままと同じ感覚になりますが、いくら綿棒などを使っても水が抜けない状態になります。
ダイビングの後に、耳の穴に入った水がしばらく抜けないと感じている人は間違いなく中耳気圧外傷です。このような潜り方をしていると、いつか耳を壊して一生潜れなくなる、外リンパ瘻に陥ってしまいます。抜けづらいけれど何とか抜けているという人も、同じ状態になります。耳ぬき不良を感じたら、すぐに専門医を受診してください。

7.耳ぬき不良潜水の後に中耳炎になることがあるが、
中耳炎が治ったら潜っている。

先ほどお話しした中耳気圧外傷は、一般の耳鼻科医のほとんどが、中耳炎と診断してしまいます。鼓膜の内側に組織液や血液がたまっていて、しかも鼓膜は内出血で真っ赤になっているのですから、急性中耳炎に似ているのです。中耳気圧外傷という病名を知らないのですから仕方がないのですが、誤った診断で不必要な抗生物質を飲まされたり、耳管通気や鼓膜を切開して貯留液を抜く治療をされてしまいます。文字のとおり、これは外傷(ケガ)であって炎症ではないのですから、これらの治療は無意味なのです。それどころか鼓膜を切った跡がきれいに塞がらず、一生ダイビングができなくなってしまった人もいます。もちろん潜水医学に精通した医師は、中耳炎と中耳気圧外傷の区別は簡単にできますし、放置していれば治ることも知っています。このような人は、耳ぬき不良の治療を受けなければ何度でも同じことを繰り返して、前述のごとく、いつしか外リンパ瘻になってダイバー生命を失うことになります。
当院を受診する耳ぬき不良ダイバーは年間約500人来院しますが、その中で本当に急性中耳炎になっている人は、ほんの3〜4人しかいません。ダイビング後、一般の耳鼻科医に中耳炎になっているといわれたら、何の治療も受けずにすぐに専門医を受診してください。

8.海外で販売されている「SUDAFED」という薬で耳ぬきがよくなるので、ダイビングの時に使用している。

SUDAFED(スダフェッド)はシュードエフェドリンという血管収縮剤の成分で、耳管周囲のうっ血を一時的に抑えるため、確かに耳ぬきが一時的に良くなります。しかし、水中で効果が切れてしまうと、リバウンドで薬を飲む前よりも耳管が腫れ上がり、重症のリバースブロックを起こすリスクがあります。 その結果、激しい耳痛とめまいのために海面へ浮上することができず、エア切れで死亡した事例も報告されています。また、血管運動に作用する薬は、組織への窒素の吸収と排出速度に影響を与えるので、ダイブコンピュータやテーブルに従った無減圧潜水であっても、減圧症に陥るリスクがあります。

また、化学構造式が覚醒剤にそっくりなので、日本では一般薬として市販することができない代物です。ですが、海外では風邪薬としてコンビニなどで売られているので簡単に入手できますし、知識がないインストラクターなどは、耳ぬき不良ダイバーに勧めてしまったり、ダイブショップで販売しているというケースもあります。
日本の市販の多くの鼻炎や風邪の薬、医師の処方薬ではディレグラにこの成分が入っているので、潜水時に使用してはなりません。

これからダイビングを始める人へ

初めて潜る場合、耳ぬき不良は潜ってみないとわからないものです。ほとんどの人は耳ぬきができるものですが、子どもの頃に繰り返し中耳炎をやっていた人、飛行機やエレベーターで耳が痛んだり、耳が塞がった状態になる人、過去の体験ダイビングや講習などで耳ぬき不良があった人たちは、耳ぬき不良を起こす確率が高いです。これらに該当する場合には、潜水前に潜水医学に詳しい耳鼻科を受診しましょう。

三保クリニック 三保耳鼻咽喉科 院長
三保 仁先生

潜水歴32年、潜水本数約3,000本、講習実績200人以上のPADIマスターインストラクター。最近ではテクニカルダイビングを専門とし、トライミックスでの水深100m超え潜水、リブリーザーなども行なうが、もっぱらサイドマウントでのケーブダイビングを専門とする。これまでに診察したダイバーは7,000人以上。耳ぬき治療には定評がある。ダイバーおよび一般医師へ潜水医学を広報・普及させるために、各種学会、医学専門誌、ダイビング雑誌など多方面での講演や執筆活動に努めている。横浜の大倉山で開業中。「三保クリニック」で検索。

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