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第2回 水中写真で知っておきたい7つのこと

水中写真がうまくなる!!
第2回 水中写真で知っておきたい7つのこと

水中写真がうまくなる!! ~プロが教える撮影テクニック~

みなさん、こんにちは。月刊『マリンダイビング』のカメラマンのはらだまです。
この連載では、水中写真の撮影機材や操作の方法、撮影のコツなどを、水中写真を始めたい、うまくなりたいという方に紹介していきます。ぜひ撮影のときに参考にしてみてください。

水中写真ならではのテクニックや機材を理解して、うまくなろう!!
撮影地:パラオ

1,水中の色を考える

 水中の世界を「青い世界」と呼ぶことがあります。これは、水中のものがすべて青っぽく色カブリをした状態に見えるためです。太陽の光は、水を透過するときに赤から吸収されていきます。実際の色とは違った色に見えるのが水中での大きな特徴です。そのまま水中写真を撮ると、ヒトの目で見ているのと同様に、青く色カブリした写真になってしまいます。太陽光下で見るときに近い色に再現してあげる必要があるのが、水中写真が陸上の写真と異なる点といえるでしょう。

ただシャッターを押しただけでは、生き物本来の色が再現できず、青カブリしてしまう

2,人工光源が必要な撮影

 前述のように、水中で撮影すると青く色カブリしてしまうので、被写体本来の色が再現できません。そこで、太陽光に近い色合いで発光する、ストロボやライトといった人工光源が必要になります。これらを使って撮影することで、被写体本来の色に近い写真が撮れるようになります。このとき、デジカメについているストロボは、陸上では暗いときや逆光時に自動で発光する「オート」に設定しますが、水中でオートだと明るい水中で発光しませんので、シャッターを押すたびに発光する、強制発光というモードに切り替えておきましょう。

水中写真では、ストロボやライトなどの人工光源がマストアイテム

デジカメのストロボは強制発光モードにセットしておく

3,浮遊物のハレーション対策が必要

 水中撮影では色を再現するために人工光源が必要と解説しましたが、同時にハレーションの問題も出てきます。ハレーションとは、ストロボなどから発光した光が水中の浮遊物に反射し、白く光って写ってしまう現象です。陸上でも、雨のときに撮影すると起きることがありますが、水中では浮遊物の多いときに起こりやすくなります。これはストロボなどの発光部とレンズが近い位置にあると起きやすくなるので、コンデジ本体だけでの撮影だと、経験がある人も多いでしょう。対策としては、ストロボやライトをレンズから離して使用することです。そうすることで余計な反射がレンズに入ることも減ってきます。失敗した経験のある方は次回試してみてください。

ハレーションが起きた失敗例。レンズとストロボの位置が近いコンデジでは起こりやすい

4,撮影する被写体の大きさ

 マンタやジンベエザメのような大物や、ギンガメアジの群れ、大規模な洞窟、一面真っ白な砂地など、通常の生活では出会わないような大きな被写体や広い風景を撮るのも、水中写真の特徴と言えます。そのため、広い範囲を撮れるように、写る範囲(画角といいます)の広いレンズが必要になります。また、逆にウミウシや、エビ、カニなど数センチ、もしくは数ミリほどの小さな生き物を撮ることもあります。そのときは小さな生き物を撮れるような機能のデジカメや近接撮影に特化したレンズが必要になります。浮遊物や透明度の関係から、陸上のスポーツ写真のような望遠レンズを使わないのも水中写真ならではでないでしょうか。

数メートルの大きさの被写体には、接近しても広範囲が撮れるワイドレンズが役に立つ
撮影地: モルディブ

上の銀色の支持棒の太さから、被写体の大きさが想像できるはず。水中写真の被写体は多彩
撮影地:インドネシア・レンべ

5,撮影位置の自由度

 陸上よりも重力の縛りが少ない水中では、上から見下ろすような撮影も可能です。陸上なら、高い所に登ったり、流行りのドローンなどのように工夫が必要ですが、水中では浮力のコントロールで見下ろすのも、見上げるのも可能です。そうした撮影アングルの自由度をうまく利用して水中写真を撮れば、今まで以上に違ったアングルが見つけられるかもしれません。

中層から、海底を移動するダイバーを俯瞰気味に撮影。高低差を利用した撮影ができるのも水中写真の魅力
撮影地:ケラマ

6,太陽を画面に写し込んでアクセントに

 陸上で太陽を撮ることは、日の出や夕日のような時間帯がほとんどで、日中は逆光になるので、あまり機会がないでしょう。ところが、水中写真では積極的に太陽を写し込むことで、青一色の背景にハイライトのアクセントができ、より明るい海中らしさを表現することができます。ワイドの撮影時は、意識して背景に太陽を入れてみるといいと思います。

太陽を写し込むことで、背景にハイライトができ、青のグラデーションもきれいになる
撮影地:ニューカレドニア

7,ダイビングスキルも大切

 浮力がある分、陸上よりも体を安定させることが難しくなるのが水中撮影です。環境への配慮を考えれば、どこにでも着底していいというわけでもないですし、魚群などの撮影では泳ぎながら写真を撮ることになります。ドロップオフでは中性浮力を保ちながら撮影することもあるでしょう。つまり、撮影以前にダイビング中に体を安定させられるスキルも必要になってきます。スキルが伴わないと、撮影に集中することもできません。安全、快適に水中写真を楽しむためには、ダイビング技術の向上も大切な撮影テクニックの一つと言えるでしょう。

体を固定できないときの撮影では、ダイビングスキルが写真の良し悪しを決める要素の一つになる
撮影地:パラオ

まとめ

 今回は陸上の撮影とは異なる点を解説しました。もちろん、撮影時間が限られていることや、レンズやバッテリーの交換ができないなどもありますが、そういった制約があるからこそ、水中写真は楽しいのかもしれませんね。これからも水中写真にまつわるさまざまな機材、ノウハウを紹介していこうと思っています。 次回はコンパクトデジカメでの撮影について紹介していきます。

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原田 雅章
1972年3月埼玉県生まれ。
日本大学芸術学部写真学科卒業。
大学在学中に沖縄を何度も訪れ、島の風景や人々に感動しスクーバダイビングを始める。
卒業後、(株)水中造形センターに入社。
同社出版物である『マリンダイビング』などの雑誌で活躍中。
国内は、伊豆半島、紀伊半島、沖縄各島など、海外は南の島を中心に、太平洋、インド洋、カリブ海など20ヵ国以上を撮影。
ダイビング経験は23年、約4500本の潜水経験を数える。
雑誌での取材はもちろん、各地でフォトセミナーを開催。"はらだま"の愛称で親しまれる。
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