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第3回 マクロムービーにチャレンジ

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初めてでもOK 石川肇に聞く撮影術 水中動画撮影に挑戦!

バックナンバー

第1回 動画撮影を楽しむ

第2回 コンデジでムービーにチャレンジ!

第3回 マクロムービーにチャレンジ

第4回 海の"ビック 5"を撮る!

第5回 今だから本格的に始めよう!デジタル一眼ムービー

第6回 ロードムービーを撮ってみよう!

第3回 マクロムービーにチャレンジ

 皆さんこんにちは、石川です。今回は
【マクロムービーにチャレンジ!】

 生物をクローズアップする撮影、いわゆる“マクロムービー“をご紹介します。水の透明度に左右されないマクロ撮影の面白さは、撮影時には見えなかった生物の不思議な行動や、色や形に肉薄することで毎回新鮮な発見があることです。

 使用機材はビデオカメラに限定せず、お使いのカメラのムービーモードもしくはビデオカメラに水中ライトを使うことを想定して説明しますね。

マクロムービーを上手に撮る3つの習慣

まずは比較的動きのスローな生物を撮りましょう!

 瞬間を切り取る写真と異なりカメラを固定してじっくり撮影するマクロムービーの第一歩は逃げない生物探しから始めます。ウミウシ、ミノカサゴ、カエルアンコウやウツボなど岩場周辺に暮らす生物やエビカニ系。またはイバラカンザシやケヤリなども艶やかでムービー向きの被写といえます。近寄っても逃げない生物を最短撮影する場合はズームレンズの性質上ワイド端で撮影します。そのほうが生物に寄って撮れるからです。この辺りのテクニック的なことは後述します。

まずは比較的動きのスローな生物を撮りましょう!

生物やカメラに詳しいガイドさんと潜る

 可能な限りガイドさんとマンツーマンで潜ることをおススメします。大人数のツアーでは水中でも団体行動になってしまって順番待ちで撮る有様。効率も悪く、巻き上った浮遊物に邪魔されて撮影どころではないはずです。特にムービー撮影は写真以上に時間がかかるので撮っているうちにグループとはぐれたなんてことになりかねません。もしマンツーマンが難しいならベテランのバディと潜るのも手です。その際はダイビングのリスクが高まることを念頭に入れてしっかりとしたダイブプラン&安全グッズを自身で装備してから潜りましょう。

自分のフィールド(行きつけのエリア)を持つこと

 例えば、四季のある日本では一年を通して映像を記録することで大変貴重なコンテンツが出来上がります。例えば5月の伊豆では「春濁り」と呼ばれる極小単位の生命が海中を漂い、夏にかけてその生物が育っていきます。場所によっては黒潮の影響で透明度も30mくらいになり伊豆でも紺碧のコンディションに生命が舞うことも。秋には群れも大きくなりベストシーズンの到来。水温は低くなりますが、ドライを着てでもガッツのあるダイバーが最高の映像や写真をモノにしています。そして冬には深海からのお客さんが現れ、雑誌や新聞のサイトにも登場。貴重な映像を撮るにはその現場に足しげく通う以外に方法はありません。
 海外ではそのエリア特有の生物を狙ってはいかがですか。固有種探しって面白いし勉強にもなりますので、ぜひ!

撮影方法は、被写体によってまったく違います。

 ドキュメンタリー番組の撮影では生命の尊厳などをテーマに卵からハッチアウト〜生存競争や食物連鎖の試練を受けて育ち〜出会い〜交尾して出産〜命の終着。その一通りを長い時間かけて撮っていくことがあります。またハッチアウトだけは水槽で撮ることもありバジェットの豊富なプロジェクトでは「撮れるまでは帰ってこなくていい!」と言われるそうです。羨ましいような非情のようなプロの現場であります。

ハゼ

 ハゼと共存関係にあるテッポウエビ、セビレ自慢のニチリンダテハゼ、 ユニークな動きのカニハゼなど、比較的見つけやすい被写体たちです。

撮影プロセス

 ニチリンダテハゼやカニハゼは水深10〜15mほどの岩の窪みに多く、見つけたら徐々に距離を詰めて行く戦法。失敗するとご存知のように巣穴に引っ込みなかなか出てきてくれません。写真ならここでNGですが、ビデオの場合はそこから粘って巣穴から顔を出した瞬間から各ハゼ固有の動きが期待できます。ごく稀にエビがハゼをクリーニングしたり巣穴を一生懸命作るシーンに出会います。カメラのズームはテレ端(望遠側の最短撮影距離)を使って被写体との距離を詰めていきます。ワイド端に比べるとピントの合う距離がかなり違って、カメラによって異なりますが水中では70cmほどは離れなければいけません。神経質な生物を撮るにはシビアな間合いが成功につながります。

カクレエビ

 イソギンチャクに棲み着くアネモネシュリンプの仲間は見つけるのも撮影も比較的イージーな部類。写真撮影とほぼ同じ要領でいけるはずだ。透明感のあるボディはフォトジェニックで時折卵を抱いた個体に遭遇することも。艶やかなハサミを持ち忙しく食事する様はムービーに向いた被写体といえるでしょう。

撮影プロセス

 イソギンチャクの隅々をチェック。
エビを発見したら潮の流れを考慮して体勢を整える(自分が巻き上げた体積物を回避し、体勢を安定させるため)。 とりあえずクマノミには目もくれずエビの動向をうかがいます。運悪くクマノミが騒ぎ出し環境が悪化した場合は1メートルほど離れてみましょう。呼吸を整えながらターゲットを観察。この間にカメラのモードやライトの向きを再チェック。イソギンチャクの上にカクレエビがチョコンと出てきたらREC開始! 手ぶれに注意&エビの目にしっかりとピントを合わせるのがポイント。

ウミウシ

 冒頭でも紹介した撮りやすい被写体であります。その中でもCHROMODORIS系(イロウミウシの仲間)は色鮮やかでスカートのようにヒラヒラとした動きもあって◎!

撮影プロセス

 発見したらウミウシの前方に回り込みます。
可能な限りローアングル(ウミウシと同じくらいの目線)にすることで背景に奥行き感が生じ、被写体には立体感が加わって画的に面白い。慣れてきたら触角だけにピントを合わせて背景をボカしたり背景を水ヌキ(ブルーのバックになってキレイ)にしましょう。この被写体は産卵や交尾シーン以外ではビデオを長回し(長時間撮影すること)するほど動きにバリエーションがないのでこういったカメラテクニックで違いを出すのが妥当。
深追いせずサラッと撮って、異なったウミウシを探しにレッツゴー!

ギンポのテリトリー争い

 あんなに小さくてもテリトリー意識がめっぽう強いことで知られるギンポ君。
 間違ってよそ者が侵入してこようものなら大変だ。穴から飛び出し背ビレや胸ビレをめいっぱい広げて威嚇する。そんなシーンにも現地のガイドさんから情報を入手することでゲット可能だ。

撮影プロセス

 サンゴや岩の穴に生息するギンポだけに、目が慣れてくれば比較的見つけやすいのですが、ムービーの撮影となると十分な時間が必要。1ダイブをこれだけに費やすつもりでひたすら待ってみる。ダイバーの存在が気になって一向にドンパチが始まらない場合は、レギュからの排気音がライトの明かりが原因もしくはカメラが近すぎるかもしれません。写真のように穴から身体の半分以上が出てくるまでは化かし合いを覚悟しましょう。

ハゼ

ペアを狙う

 写真の場合でも単体では図鑑写真のようなってしまうけれど2匹だと妙に嬉しかったりするでしょ?!1匹ではどうにも間延びしたヨウジウオですら2匹いればハート形に交差したり寄り添ったりします。ベラやスナッパー系のように複数に求愛するタイプはさておき、ニシキフウライウオやロクセンヤッコのように2匹一緒に行動するシーンは、それだけでドラマ性があるのです。

撮影プロセス

 岩のオーバーハングした地形や窪みなどにマクロ生物が多く見られます。このような場所では自分の排気によって岩についた堆積物を撹拌してしまい、雪を降らせてしまうことがあるので注意が必要!2匹を見つけたら、現在どの程度のお付き合いなのかを考察する。例えば出会ったばかりで雄のライバルが横取りを目論でいるとか、もう既に卵を抱いているなど。視点を変えて観察することで思わぬ収穫があるでしょう。

マクロムービー三種の神器

水中ライト

 カメラと同じくらいに重要で、値段は光の明るさや、照射角(光が照らす範囲)、電池の持ちなど性能に比例します。多少高額でも後々のことを考慮して先進のLEDライトを購入するのがおススメ。
『マリンダイビング』11月号(13/10/10発売)P150〜「ピカッと照らして撮りやすい!水中ライト」により詳しい水中ライトのご紹介がありますので参考にしてみては?

クローズアップレンズ

 カメラの最短撮影距離を短くすることで被写体に近づくことができるアイテム。コンデジ用のハウジングには水中で脱着可能なクローズアップレンズが普及しています。

クローズアップレンズをつけて撮影するとこんなに精細な表情が撮影できる
クローズアップレンズをつけて撮影するとこんなに精細な表情が撮影できる

水中三脚

 使用できる場所は限定されてくるが砂地や岩場に立てられるならば便利なグッズに変貌します。砂地に生息する警戒心の強いハゼやガーデンイールなどは無人撮影によってインパクトのあるクローズアップ映像が可能となります。
 またイバラカンザシのように引っ込んでも同じ場所から姿を現す被写体にも好都合。ゆっくり出てくる様を編集で”早回し”にしても面白い。

 大きな開脚機能をもち、3本の足が独立して長さや角度の調整可能。

大きな開脚機能のもち3本の足が独立して長さや角度の調整可能。

 このように小型で金属製のものなら一般の三脚を水中に持ち込むこともできます。
水中専用三脚に比べると取り回しは不便ですが、格段に安価だしそれなりに効果的。使用後はしっかり水洗いしてグリスアップ。

このように小型で金属製のものなら一般の三脚を水中に持ち込むこともできる。水中専用三脚に比べると取り回しは不便だが、格段に安価だしそれなりに効果的である。使用後はしっかり水洗いしてグリスアップ。

 撮影を進めるにつれて撮りやすい被写体やそうでないもの、カメラの弱点、自分自身の思考回路などが見えてくるはずです。思考錯誤を繰り返しながらワンランク上の映像美を狙って下さい!

次回は 第4回 海の"ビック 5"を撮る!

石川肇【石川肇プロフィール】
1961年東京生まれ (株)水中造形センターを経て独立。
写真・映像撮影の編集や、3D関連の撮影編集を手掛ける。
「海辺の旅」をテーマに作品を撮り続け、撮影で訪れた国は80カ国以上。
テレビの海洋ドキュメンタリーやCM、ビデオ作品、政府観光局のPVといった映像作品や、雑誌、イベント、ラジオなどの多方面のメディアで活動中。 最近は3D映像の作品を多数手がける。
3D番組としては、世界初の試みを中心に企画して番組化。
主な3D 番組 「タヒチ:ザトウクジラ」・「モルディブ:ハニファルベイ」・「南インド」・
「ハワイ:ナイトマンタ」・「3Dカリブ海 最速のプレディターセイルフィッシュ」など。
国際3D協会ルミエール・ジャパンアワード2013 にてドキュメンタリー賞を受賞

of 石川肇公式サイト
URL:http://www.horizon-uw.com/

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