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『マリンダイビング』創刊記念YEAR特集第4弾
『マリンダイビング』50年に見る
BCの進化

『マリンダイビング』創刊記念YEAR特集第4弾 『マリンダイビング』50年に見るBCの進化

1969年に日本で初めて発行されたスクーバダイビング専門誌『マリンダイビング』。
2018年は創刊50年記念YEARとして、『マリンダイビング』とともに歩んだ
ダイビングにまつわるモノ、エリア、生き物などとの50年間をフィーチャーしていきたい。
第4弾となる今回は、中性浮力を確実にとるために必須のBCを取り上げてみた。

■構成・文/後藤ゆかり(マリンダイビング副編集長)

創刊時にBCは存在していなかった

ハーネスでタンクを背負っている!

1969年の創刊第1号にはカラーページはまだわずかしかなかったが、表紙からして当時のダイビングの様子がよくわかる情報量たっぷりな写真。
そしてページをめくると出てきたのはこの写真。
「重巡洋艦 熊野を探る」という特集で、本来は手にしているモノが重要なのだが、一瞬、ダイバーの姿に釘づけとなる。
Tシャツというか、下着?に短パンで潜っている姿にも驚かされるわけだが、私たちが普段タンクを背負うのに使っているBCがなく、ベルトでタンクを固定しているように見える。
これがいわゆる「ハーネス」と呼ばれるもので、後にBCが登場しても、1980年代半ばぐらいまでこのようなハーネスを使っているガイドダイバーはいたように思う。

タンクを背負うには格好の道具ではあるけれど、ダイビング中の浮力はどのようにして調整していたのだろう?
そんな疑問がわいてはこないだろうか?

このダイバーはウエットスーツを着ていないので浮力がなく、ウエイトを着けているようには見えないが、昔のダイバーはウエイトを腰に着け、沈むために肺の中の空気を出して潜降し、浮き上がらないようにひっきりなしにフィンキックをしていたという。
だから泳力も体力も必要だった。つまり女性にはかなり厳しかったことが予想される。
この頃、女性ダイバーも少しずつ増えてきたそうだが、体力的にはかなりの猛者だったに違いない。

『マリンダイビング』創刊号に掲載された写真。 テーマは違うのだが、ダイバーの装備に目を奪われる

新製品コーナーに出ていた
セイフティベスト

現在のBCが出る前には「セイフティベスト」という、現在でいうライフジャケットのようなものが、ダイビング器材としても販売され始めていたようだ。

同じく創刊号には新製品を紹介するページがある。
そこで目を引いたのが、この写真の右下。
左上に商品名があるのだが、クレッシーサブ型セイフティベストとある。
陸上のライフジャケットとは異なりダイビング用に開発されたもので、口で給気するホースと排気用のプルダウン、そしてポケットが付いている。

ただその後の1970年代前半の『マリンダイビング』では、ライフジャケットを水中に持ち込むスタイルのダイビングはさほど流行らなかったのだろうか。モデルの女性ですらハーネスで潜っている写真が多かった。

創刊号に登場していた新製品のセイフティベスト(右下)

1975年4月号の「ライフベスト」特集に
「バランシングベスト」が登場

「セイフティベスト」は商品名ということで、「ライフベスト」と呼ばれるようになったようで、1970年代に入り「ライフベスト必着」が合言葉となっていたようだ。
だが、使い方によっては安全性が損なわれるという面もあったようで(そりゃそうだ。浮上時は空気を抜かなければ急浮上してしまうのは、今のBCも同様)当時の『マリンダイビング』を見ていると、使用には賛否両論あったようである。
それはともかく、水面に浮かんだ時には浮力も確保されるので安全ということで、ライフベストは必着となったのだろう。
この当時、その形状から、ダイバーの間では「前掛け」と呼ばれていたライフベストだが、後にジャケットタイプのBCが登場した時に、区別するために「前掛け式BC」と呼ばれたものだった。

さて、そんなライフベストもようやく普及への目途が立ったようで、『マリンダイビング』の1975年4月号(通巻31号)に「ライフベストとバランシングベストの種類と特徴一覧表」という記事がある。

1975年4月号のライフベストとバランシングベストの種類と特徴一覧表

ライフベストはいいとして「バランシングベスト」とまた聞きなれない言葉が登場している。
なんだ!?
日本アクアラングの商品「ライフジャケットBC-Ⅱ」には「BC」という言葉も登場しているではないか!(左上、左から3番目)
その左隣のスキューバプロの商品には「バランスィングベスト」とある。
2つともレギュレーターからエアの注入ができる製品で、バランスィングベストのほうにはインフレーターホースも付いている!! これまでのライフベストを改良しただけのものから、ダイビング仕様の製品が開発され、現代のBCの原型となるものが1975年、日本でも販売されるようになってきたというわけだ。
そして1977年にはタバタからも「BCV-700」「BCV-800」というバランシングベストが登場。
国産のBCがついに誕生したというわけだ。

さらに1977年5月号(通巻51号)では、フロリダで行なわれたDEMAショーをレポートしているのだが、 “ベストの専門メーカー”「シークエスト」の「BC」がズラリと並んだ写真を掲載。 バランシングベストという呼称ではなく「BC」と紹介されているのであった。

1977年5月号でベテランインストラクターにレポートしていただいたDEMAショー。 ここで「BC」という言葉が普通に使われるようになっていた

ちなみにBCのBはバランシングから来ているのではなくbuoyancy(浮力)の略称。Cはcompensator(補正装置)の略称で、BCは浮力補正装置の略称というわけだ。

1980年、ジャケットタイプBCの
波が押し寄せてきた!

ダイビングを変えた
新兵器登場!

ダイビングの歴史の中には、流れを変えるエポックメイキング的なことがいくつかあるのだが、誰もが声をそろえて言うのが、ジャケットタイプBCの登場だろう。
スキューバプロが「スタビライジングベスト」という商品名で新発売したことから、発売当初はその名前がジャケットタイプBC全体を表すこととなり、スキューバプロの商品は「スタビ」の愛称で人気を博し、今なお使用しているダイバーも少なくない。

1980年の『マリンダイビング』9月号では“ダイバーの新兵器”として徹底分析をしており、本文では「日本のダイビング界に新しい波が押し寄せた」とある。
しかし実際、アメリカやオーストラリアでスタビが登場したのはその5年くらい前とあるので、日本のダイビングは今とは異なって、すぐに新しくていいモノが入ってくるという時代ではなかったようだ。

さて、なぜスタビがいいのかというと(文章は当時のまま)、
1) 海面でまっすぐに立てる
2) 水面遊泳がラクチンだ!
3) 浮力がぜんぜん大きい!
4) 解放感がいっぱいだ!
の4点が挙げられている。つまり、それまでのものに比べて非常に安定して優れた浮力体であるということがわかる。

1980年9月号にどどーんと掲載された「スタビライジングベスト徹底分析」特集 よく見ると、ハーネスは自分で取り付けるようになっていて、完成形にはなっていない

同じ号にはタバタやUSダイバーズ、アポロスポーツ、シークエストなどから出ている“スタビライジングベスト”のカタログも掲載されている。すべてにCO2カートリッジが付いているのがこの時代の特徴(タンクのエアからの給気ができなくなった場合に使える緊急用の給気手段)

徐々に広まるスタビ

ライフベスト、セイフティベストと呼ばれていたBCは、いつの間にかアメリカ式に「ホースカラーBC」と呼ばれるようになっていたのだが、1981年12月号の表紙でもまだホースカラーBCを使用している写真が採用されている。
スタビライジングベストが非常にいいものではあるといわれても、当時7~8万円するホースカラーBCを使用していた方々がすぐにスタビに変更するには、経済的にもついていけなかったのかもしれない。
でも、安全のためにもスタビが大切!ということで、同じ1981年12月号ではベテランインストラクターの解説による特集を組んでいる。
この時には「スタビライジング・ジャケット」ではなく「BC」という名称に変わっているのだが、
「BCの出現によってライフベストを使っていた頃のダイビングにくらべ、はるかに少ないストレスで楽しくダイビングができるようになりました」
とある。
具体的には
「BCを正しく使うことにより、水面でも水中でもいつでも十分な浮力を確保することができるようになりました。(中略)水面で適正ウエイトであっても、潜降してゆくにつれてウエットスーツが圧縮され、浮力が少なくなってしまい、沈みぎみになってしまいます。このときもBCに給気してやることによって浮力の確保ができ、適正ウエイトと同じ中性浮力の状態にすることができます」
と、当時ほとんど取り沙汰されていなかった「適正ウエイト」「中性浮力」という言葉がしっかり出てきている(記事内では「適性」という誤字で表記されていたが)。

そう、私たちダイバーの永遠の課題、中性浮力を実現するために、なくてはならないものが登場したということだったのだ!

中性浮力をとるためにBCが不可欠なものであると説いた特集となっている1981年12月号(通巻106号)

ちなみにこの1981年12月号では、BCのインフレーションシステムや生地、浮力体の構造、耐久性などについても詳しくあり、選ぶポイントも示唆している。
BCにハーネスが標準的に付いたのはいつぐらいくらいからなのかはすみません、定かではないのだが、1982年1月号のダイビングショップ広告には「ハーネス付き」と書かれたBCもあり、でもその後はハーネスなしのBCもまだ販売されていて、このころ徐々に各メーカーでハーネス(というか、タンクを固定するためのベルト)を付けだしたものと考えられる。
1982年7月号では「スキューバプロのスタビはほかと異なり、タンク固定ベルトが付いているので、高額ではあるけれど、ハーネスや部品を別に買うよりは」オトクといった記載もあるので、この頃に、現在のBCの原型が普及しだしたのだと思われる。

名称がジャケットBCに

前掛け式BCがいつの間にか「ホースカラーBC」と呼ばれたようにスタビのほうはそれが商品名であることからいつの間にか「ジャケットタイプ」の「BC」と呼ばれるようになっていた。『マリンダイビング』1983年4月号では「ジャケットBCの時代だ」と、タイトルになっている。

表紙にもジャケットタイプのBCを着たダイバーが登場した(1983年4月号)

従来のホースカラータイプBCと、新しく台頭してきたジャケットタイプのBCを比較した記事(1983年4月号)

ショルダーベルトタイプBCの登場

ジャケットタイプのBCが日本に入ってきて5年。ようやく普及しだしてきた1985年に 今度はジャケットタイプでも、肩から胸にかけてベルトを採用した新しいタイプのBCが日本に上陸した。 1985年の『マリンダイビング』9月号に登場したのがシークエストの「ADV」だ。

1985年9月号の『マリンダイビング』に掲載されたシークエスト「ADV」の広告。当時はシーアンドシーが輸入していた

その次の号で、編集記事でも「肩周りのエアーバッグを排し、腕の運動性と視界の向上を図り、水面では浮力を底部に集中させることによって、体を高く持ち上げることに成功している」と「ADV」を紹介。
このショルダーベルトタイプのBCは、ベルトの長さ調整でどんなダイバーにもぴったりフィットするフィット感が抜群。
他のメーカーも追随することになる。

ほどなくして、ショルダーベルトにバックルが取り付けられ、脱着も非常にラクということから、ダイビングショップが講習に最適とショルダーベルトタイプのBCを取り扱うようになり、現在に至っている(調整がしやすいことから「アジャスタブルタイプ」などとも呼ばれる)。

ニーズに応じた変化

その後30年間以上にわたって、BCの形としては、ショルダーベルトタイプのBCとジャケットタイプのBCが圧倒的なシェアを占めてきており、2000年に入ってからはショルダーベルトタイプのBCがさらにシェアを大きくしている。
女性向けに胸まわりのカッティングを工夫したり、ウエストをしっかりホールドするタイプのものを作ったり、海外の人に比べ小柄な人用のBCを作ったりと、今もなお進化中ではある。
色もデザインもバリエーションは豊かになっている。

また、テクニカルダイビング向けにバックフロートタイプのBC(背中に空気がたまるタイプ)が展開されているが、本誌ではほとんど扱っていないので、ここで紹介することは控えたいと思う。
けれど、水中撮影時などは背中に空気がたまって水平姿勢が安定するので、バックフロートタイプのBC(バックマウントタイプともいう)も、フォト派にオススメだ。

インフレーターの進化

BCは浮力体のほうばかりクローズアップされるけれど、空気を出し入れするインフレーターもホースカラーBCの時代からかなり変遷している。

こちらについては、残念ながら『マリンダイビング』では、時代を追うことが難しいので、省略させていただくが、普通のインフレーターだけでなく、オクトパスの代わりのバックアップ呼吸源としても使えるタイプのものが1980年代に登場したり、BCに一体化させて給排気できるタイプのものが2000年代に登場するなど、変化はBCの浮力体と同じぐらいあるといっていい。

快適なダイビングは
BCなしには考えられない

ということで、BCがなかった時代から現在まで、駆け足で紹介したけれど、安全のためにも、中性浮力をとって快適に潜るためにも、BCなしには考えられない。

初心者の頃、先輩からもらったBCを使っていた筆者は、そのBCがあまりにもサイズが合わず大きかったのに、それでいいと思って使っていた。
けれど、その後、ジャストフィットした、新しい機能満載のBCを使ってみて、あまりの快適さにびっくりしたことを今でも鮮明に覚えている。
皆さまも自分に合ったBCと巡り合えますように!

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