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海のいきもの
第48回 食べ物としてのサンゴ
サンゴと生きるPart2

海のいきもの

今年(2018年)は国際サンゴ礁年
というわけで、前回に引き続きサンゴ礁に暮らす生き物とサンゴとの関わりに目を向けてみよう。
今回はサンゴを食べてしまう生物たちを紹介。
おとなしい顔をしたアイツも、意外なことにサンゴイーター!? ●構成・文/山本真紀(2018年10月制作)

悪名高き例のあの生き物

まずは誰もが知っている「サンゴの天敵」。
通常ならほとんど目に付かないが、大発生したときには真っ昼間からサンゴに覆い被さりやりたい放題。

オニヒトデ

大きな個体は直径50cmにもなる大型ヒトデ。サンゴのポリプが大好物で、食害された直後は真っ白となる(写真では右が食べられた痕、左はまだ生きているサンゴ)。しかも体表のトゲには強毒があり、刺されると非常に危険なため悪名が高い。とはいえ、彼らもれっきとしたサンゴ礁の住人。人間などが与り知らぬ役割を果たしている可能姓もゼロじゃない。撮影/沖縄・石垣島

豪快に生サンゴをガリガリ!

「サンゴは固い」と言われるが、それは石灰質の骨格部分。サンゴの本体はポリプと呼ばれる柔らかい部分で、イソギンチャクのような姿をしている。もちろん、とっても小さい。このポリプを好んで食べる生き物はたくさんいるけど、一番豪快な食べ方をするのはこちらの大型魚です。

カンムリブダイ
ブダイの仲間は死サンゴや岩に生えた付着藻類を食べるものが多いが、成長すると1mにもなるカンムリブダイは生きたサンゴを食べる。サンゴ礁の外縁部を群れ泳ぎ、石灰質の骨格ごとポリプがガリガリ囓るシーンは圧巻だ。たまに真っ白なフンを大量に排出し、これがサンゴ礁のホワイトサンドの素になっているという(他のブダイ類も同様)。撮影/マレーシア・シパダン

犯人は誰だ!?
サンゴの表面がクッキリと削られている。オウムのクチバシのような板状の歯を持つブダイ類の食害のようにも見えるが、撮影地からカンムリブダイとは考えにくい。これだけ削り取っているから、ポリプをつまんで食べるタイプのチョウチョウウオやポリプだけ消化して食べるオニヒトデの仕業とも思えない。いったい犯人は誰なんだろう? 撮影/ガラパゴス諸島

サンゴをツンツン、つまみ食い

サンゴの本体であるポリプを食べる生き物はたくさんいるが、 その中でもポリプをメインディッシュにしている魚たちを探してみると、 いかにも「サンゴ礁のトロピカルフィッシュ」というものばかり。

テングカワハギ
浅いサンゴ礁に生息する5~6cmほどのカワハギの仲間。頭を斜め下に向けながら、ツンツンとサンゴを突く姿を見かける。典型的なポリプ食であるため、サンゴが少なくなると急に姿が見えなくなる。そのため美しくもユニークな姿でアクアリストに人気だが、餌付けが困難で飼育は難しいという。撮影/沖縄・久米島

ミスジチョウチョウウオ
好物はサンゴ(特にミドリイシ類)のポリプ。成長すると付着藻類も食べるようになるが、幼魚はポリプがメイン食で、サンゴが貧弱になったエリアではすぐ姿が見えなくなる。大きさ10㌢前後。撮影/沖縄・石垣島

ミカドチョウチョウウオ
美しく高貴な印象の模様のチョウチョウウオで、サンゴ礁をペアで泳いでいることが多い。サンゴ(特にミドリイシ類)のポリプをメインに食べるため、豊かなサンゴ礁に多い。大きさ10cm前後。撮影/フィリピン

スミツキトノサマダイ
スーッと一筆入れたような青い斑紋が特徴。青&黄というマリンダイビングカラーのチョウチョウウオの仲間。やっぱりサンゴ(特にミドリイシ)のポリプが大好物。大きさ10cm前後。撮影/沖縄・伊江島

ハクテンカタギ&ハナグロチョウチョウウオ
サンゴのポリプを好んで食べるチョウチョウウオには、口元が比較的丸っこいという特徴がある。小エビやゴカイなどの小動物も食べる雑食性では、やや口元が突き出している(フエヤッコダイが典型的)。撮影/タヒチ

サンゴの「放出物」も美味しいよ!

最後にサンゴのボディではなく、サンゴが外に放出したものを食べている生き物たち。

粘液を食べてます
サンゴの表面を薄い膜のような粘液が覆っていることがある。サンゴが放出したもので、干出時の乾燥から身を守ったり、降り積もった泥やチリをからめ落とす役割がある。成分は糖タンパク質や多糖、脂質のうえ、多くの微生物も絡め取っていくので、海洋生物にとっては立派な食料となる。前回紹介したサンゴガニの仲間(写真)のように、枝状サンゴの隙間に暮らす生き物の中にはコレを主食とするものも。撮影/沖縄・ケラマ諸島

バンドルを食べてます
サンゴ礁では年に数回、サンゴの一斉産卵という現象がある。その年の水温や種類によって時期は前後するものの、一度に大量に放出されるバンドル(卵と精子が詰まったカプセル)は海洋生物にとっては栄養満点!
❶ナイトダイビングで撮影された産卵シーン。トゲスギミドリイシの上に浮かぶ小さな点々は、各ポリプから放出されたバンドル。バンドルは徐々に水面のほうに浮かんでゆく。撮影/沖縄・ケラマ諸島
❷バキュームカーのようなジンベエザメの捕食シーン。動物プランクトンを主食とするこの巨大ザメにとって、魚や海洋生物の卵も絶好の栄養源。サンゴのバンドルも例外ではない。例えば、西オーストラリアのニンガルーリーフでは、サンゴの産卵時期を含む3~7月にジンベエザメがよく現れる。撮影/メキシコ・ラパス

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